世田谷城跡保存会 会長 河原英俊 氏、理事 五木田栄一 氏にキョウユウに会誌の印刷を依頼した経緯とその効果について詳しく聞きました。
(※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています)
東京都世田谷区に城?
- 世田谷城跡保存会について教えてください。
わたくしどもは「世田谷城という史跡を都市開発から保護すること」を目的に平成17年に設立した郷土史研究会です。
- 世田谷城…? 東京の世田谷区に城があったということですか。
はい、ありました。名前もズバリ「世田谷城」です。ただし城といっても、普通に想像する「天守閣」がそびえたつようなしろものではなく、土塁や堀でできた「土の城」で曲輪内に館がありました。
世田谷城は、14世紀、室町時代はじめにあったと考えられ、1567年(天正18年)豊臣秀吉による小田原攻めの際に廃城になりました。わずか200年しか存在しなかったわけです。
世田谷城の記録は少なく堀と土塁の一部が残っているだけですが、貴重な中世の城跡ということで東京都の旧跡に指定されています。しかし2005年(平成17年)に世田谷区の名刹、豪徳寺の門前で、マンション建設工事が進められ、世田谷区で発掘調査をしたところ、空堀の跡や陶器などをはじめ様々な遺跡や遺物が発掘されました。これは歴史的な発見でした。
しかし旧跡の指定は、城跡を保護する仕組みが十分でなく、放置していると、そのままマンションが建ちかねませんでした。そこで地元有志と共に「世田谷城跡保存会」を結成し、世田谷区など行政へのはたらきかけを始めました。
最終的には豪徳寺が門前のその土地を買い取ることになり、破壊寸前で保存することができました。しかし、ここと世田谷城址公園は城跡全体のほんの一部です。私たち世田谷城跡保存会は、現在も「城跡全体の保護と復元」を実現するための活動を粘り強く進めています。
今回、キョウユウに印刷を依頼した会誌「砂上楼閣」の発行も、その保存活動の一環です。この会誌は、会員のほか、世田谷区や東京都など関係機関に配布しています。2017年に第1号を出して以来、年4回の頻度で発行しています。会誌の制作目的には、「世田谷城跡の研究」のほかに、「関係機関へのアピール」も含まれます。しっかりした本を出して発信し続ければ、それだけ私たちが世田谷城跡の保存に真剣に取り組んでいることが世田谷区民や都民へ伝えられると考えたのです。
【印刷物の概要】
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
ページ数 | 80頁 | 平綴じ |
紙 | 表紙:コート紙 本文:書籍用紙 | - |
データ | すべて世田谷城跡保存会にて制作 | WORD |
印刷会社を選んだ経緯
- 会誌の印刷会社はどのように探したのでしょうか。
会誌の発行を決定したのが2017年6月です。それからネットで「自費出版 印刷 郷土史会」などで検索して調査しました。
まずは10社ほどリストアップし、その後、一次選考(ふるい落とし)をしました。選考のときは「相談できるかどうか」を重視しました。
「砂上楼閣」は当会がはじめて取り組む会誌です。本を作るからにはこちらにも「想い」があるので、それに聞く耳をもってくれる所、親身に相談に乗ってくれるところが良いと考えたのです。
候補の中には、いわゆる「激安」の印刷会社もありました。しかし、そうした会社に依頼する場合は「完全原稿を出すこと」が条件でした。これは「弊社は印刷物の中身には関知しません。もらったデータをただ印刷するだけです」ということを意味します。これでは初めての本作りが、「相談なし、調整なしの一発勝負」になってしまいます。それは印刷初心者の私たちにはハードルが高すぎました。
そんな中、キョウユウのホームページには「相談できる」と大きく書いてあり、これは私たちの琴線に触れました。ホームページ内の見積もりシステムを使って概算価格も算出できました。十分に許容範囲内の価格でした。
そして、最後に決め手になったのは、「社史が良かった」ことです。
社史の魅力
- 「社史が良かった」とは具体的には。
私たちは歴史研究家なので、つい「歴史」や「なりたち」が気になります。たとえ印刷会社のホームページであっても、会社概要や社史は、思わず読み込んでしまいます。キョウユウの社史によれば、初代のお父様が印刷の町、神楽坂で創業し、その後、山有り谷有りを経て、今は2人の息子さんが会社を引き継ぎつつあるとのこと、そんな歴史を知って、この会社はいいな~、と改めて思いました。
砂上楼閣の印刷はキョウユウに頼むことに決定し、キョウユウにその旨を伝えました。その後、キョウユウの提案により、印刷に先立って「サンプル本」を作っていただけました。これは、この上なく助かるサービスでした。
サンプル本の効果
- どのように助かったのでしょうか。
サンプル本のおかげで、私たちの頭の中にある「本の出来上がりイメージ」が実現できるのかどうか、事前に確認できました。「本文には『書籍用紙』を使う」「サイズはA5判」「表紙は『コート紙』で」などの言葉だけでは、素人の自分には出来上がり状態がイメージできません。しかしサンプル本があればすぐに分かります。百聞は一見にしかずとは、このことです。
サンプル本は、会員にも回覧しました。会員からは「これはスゴい」「こんなに書籍らしく仕上がるとは思わなかった」と良反応がありました。サンプルのおかげで安心して印刷ができました。
印刷の仕上がりへの感想
- サンプル本、あるいは本番印刷で仕上がった本を見ての感想は、いかがでしたか。
まず本文の「書籍用紙」が良い味出してます。書籍用紙とは、その名の通り、市販の書籍で使われている用紙で、やや黄みがかっているのが特徴です。本文に真っ白の紙を使うと、コピー用紙に印刷したようで、高級感や味わいに欠けますが、書籍用紙を使ったことで、ぐっと「書籍感」が増しました。
また白黒写真の発色も良いです。黒の部分が、重厚で黒々しており、色として「眠く」ありません。ちなみに、1号には「中世城郭研究」の著者である著名な城郭研究家八巻孝夫先生からも「郷土史の本で資料として重要なのは古地図だが、この本の古地図の写真は良い。見たい情報がハッキリ見分けられる」とお褒めいただきました。
会誌作りで重要なこと
- 全国の他の郷土史会向けに、印刷に関するアドバイスなどあればお聞かせください。
単純な話として、せっかく後世に残る本を作るからには良い本にしないともったいないです。印刷については、やはり「相談できること」「事前にサンプル本がもらえること」の2点が大事だと個人的には思います。
キョウユウさん、ここまで3号にわたり、すばらしい本を印刷してくださり、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いします!